SPIRITUAL Voyage 04 of 幸せことば

結 婚 / 第4章 神様にもっとも近いいのち

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旅に出発した七夜は、電車の中からカフェでの会話の続きを回想します。
弓月は旅に出る彼女のために率直な言葉を贈ります。
弓月の友人夫妻の話しを通して、七夜はさまざまな愛について考えます。

絵はがきセット

わたしはとりあえず、北へ向かうことにした。
電車で行ける最北まで行ってみるつもりで、最小限の荷物に、薄での長袖も入れて、
そして、弓月さんにもらった絵ハガキも、もちろん旅のお供に連れてきた。
電車に揺られながら、5枚のその絵ハガキをリュックから取り出して見ながら、
あの後、弓月さんと交わした言葉の数々を思い出していた。

「そーだ、弓月さん! わたし、旅先からいろいろご報告したいから、
 ケータイのメアド交換しませんか? 写メも送りますよ♪」
「あぁ、ごめんね、私ケータイ持ってないのよ。」
「え~っ!? ケータイ持ってないんですかっ!!」

まじビックリ! 今ドキ、ケータイ持ってないなんて…。

「ケータイないと、楽よぉ~♪」
「2度ビックリ!!」
「ふふ…。 前は使ってたんだけどね、いっつも電話やメールが気になって、
 依存症になる人も多いでしょ?10年前はなくても暮らせていたわけだし、
 思い切ってやめたら、楽ちん楽ちん。 笑 」
「そっか…、じゃあ、旅先レポートできませんね…。」
「家に、パソコンはあるのよ。でも、旅先からメールうったりしなくていいからね。
 たまにはケータイから離れて、旅の空を満喫してきて。」

そう言いながら、弓月さんがカバンから何か取り出した。

「その代わり、もし気が向いたら、旅先から葉書きでも書いてほしいなぁ。」
「ハガキ?」
「そう。 ほんの二言三言でいいの、葉書きもらえたら嬉しいなぁ。
 七夜ちゃんが旅にでるって聞いて、実は今日持ってきてみたの。」

テーブルに置かれたのは、かわいい絵ハガキのセットだった。

「ハガキかぁ、書いたことないけど、いいかも…♪」
「旅先の空気感まで、その人の字を通して伝わってくるのよねぇ。
 もらう側はすごく嬉しいし。」
「へぇ~~~。」
「書くのも届くのもメールより時間かかるけど、待つ楽しさがあって、
 大切な人への大切な思いは、文字にしたためるといいものよ。」
「へぇ~♪」

わたしは、新鮮な思いでその5枚のハガキを手にとってみた。

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親の愛

「七夜ちゃんのご両親は、旅に出ることについては、なんて言ってるの?」
「べつに何も…。気をつけて行ってきなさいよ、って。
 あと、電話はまめに入れなさい、って。」
「そっか。私が昔、遠出する直前にね、母がまじめな顔でこんなこと言ったの。
 旅先は開放的になるだろうから、自分を安売りするようなことはしちゃダメよ、ってね。」
「安売り?」
「七夜ちゃん、いい子だし、まだ若いから、きっと旅先で男性との出会いもあって、
 近づいてくる人もいると思うけどね。自分を大切にしてね。」
「あぁ、大丈夫ですよ! 今、そんな気分じゃないですからっ♪」
「そう? 今までとはちがう世界の人たちに必ず出会うわよ。
 一生の友人となる女性や、ステキに見える男性もいるかもしれないわよぉ~!」
「え?マジで? なんちゃって~♪」

私をからかうように笑ったけれど、どことなく慎重な感じの弓月さん。

「親の言うことは、大事。でも、後でその意味がわかったりするものよねぇ。」
「後で?」
「そう…。七夜ちゃん、親の言うこと、素直に聞ける方?」
「う~ん…、最近ちょっと、うっとおしいと思うこと、多いかも…。」
「正直ね。なんだか、おせっかいな親戚のおばさんみたいな感じだけど…。
 将来、七夜ちゃんが結婚する時も、親の承諾はかならずもらった方が幸せになれるわ。
 両親に、祝福してもらうのと、そうでないのは、ぜんぜん違うのよ。」
「そーなんですかね?」
「どんな親でもね、子供の幸せを願わない人はいないから、私たちのためを思って
 言ってくれることが多いでしょ。損得じゃなくて、愛情から言ってくれる
 アドバイスだから、耳を傾けた方がいいわ。」

そーなんだろうな…。
頭ではわかってるけど、20歳も過ぎて細かいこと言われると、
もぉ~、うるさいっ!と、つい思ってしまう…。

「逆に言えば、親を悲しませるようなことはしない方がいい、っていうことよね。」
「それは、まぁ…。」
「でも、若い娘を旅に出してくれるんだから、七夜ちゃん、信頼されてるのね。」
「そーなのかな?」
「もちろん、そーよ!ある程度、一人でなんでもできるようになって大丈夫だと
 思うから、許してくれたんでしょ? それは、信頼されてる証拠よ。」

いつも、親には事後報告ばかりだった私が、今回は、早い時期から相談していた。
そのせいか、両親も、頭ごなしに反対することはなく、ちゃんと安全な計画を立てて、
自分で旅費も工面できるなら行ってもいいと、言ってくれた。

「もし反対されても、OKもらえるまで、ねばるつもりでしたけどね!」
「結婚も同じよ。大事なことほど、事後報告なんかじゃなくて、ちゃんとまず
 両親に話して、認めてもらった方が、後々うまくいくわ。」
「大事なことほど…。」
「そーよ。もし、なんらかの理由で反対されたとしても、貫きたかったら、誠意を見せて
 認めてもらうまでがんばればいいのよ。」
「わたし、今までけっこう、自分だけで決めちゃうこと多かったんですよね。
 でも、今回は逆で、早くに相談してみたらいろいろ親にアドバイスもらって、
 話しがスムーズにいって。」
「それはそうよねぇ。 子供の相談だもの、親身になって一緒に考えてくれるわよ。
 その結果がYESでもNOでも、動機に愛情があるから。」
「動機に愛情?」
「そう。ただ純粋に、子のためを思う愛が根っこにはあると思うわ。
 そのことに、一体どのくらい気付いているのかしらねぇ、私たち…。」


いのちの流れのなかで

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「ねぇ、七夜ちゃんの身近な人で、子供産んだ人っている?」
「いないかなぁ。」
「そっか。私の昔からの友人でね、結婚して何年も子供に恵まれない夫婦がいてね、
 不妊治療とかもしてたのよ。すごく大変な思いもして、でも授からなくて…。
 あきらめかけていたときに、妊娠して男の子を産んだの。」
「へ~!」
「本人たちも、両家の親御さんもそれは喜ばれて。私も、授かる前から出産前後まで
 関わったのは初めてでね。その赤ちゃんが1歳になって、よちよち歩けるように
 なって、ものすごーく笑った顔がかわいいのよぉ。。。」
「へ~。」
「赤ちゃん、かわいいと思う?」
「いやぁ、実のところ、子犬とかの方がかわいいと思うかも…。」
「あら、同じね、私も昔はそう思ってた。」
「ちっちゃすぎて、柔らかくって、どう扱ったらいいかわからないし、
 意思の疎通ができないし…。」
「そーよねぇ。ところがね、ずっと一緒にいてみると、実にかわいいのよぉ。」

弓月さんの顔が思わずほころんだ。

「その友人がね、こんなことしみじみ言ってたわ。
 言葉もまだしゃべれないのに、私が失くし物して独りごと言いながら探してたりすると、
 キョロキョロ探して持ってきてくれるの。驚くわよ!
 大人の言っていること、想像以上によく理解できていると思う、って。」
「へ~!」
「それでね、見てるとお母さんと赤ちゃんって、言葉がなくても通じ合っていて、
 そこにあるのは愛のみなのよねぇ、本当に…。」
「愛のみ…。」
「純粋で、親の愛だけで生きていて、周りを幸せにして、
 まさに神さまからの預かりものだと感じる…、って言ってたわ。」
「神さまからの預かりもの…。」
「そう。神さまにもっとも近い命なんじゃないかと思う、って彼女が真剣に言うの。」

神さまが指名して、この夫婦、あの夫婦と、送り出すのだろうか?

「結婚して、夫婦の間の喜びは2倍になって、それこそ、お互いの苦労や悲しみは
 本当に半分になって、幸せだなぁ、としみじみ思った。でも、子供と過ごすこんな喜びは、
 今まで味わったことのない類いのもで、なんとも言いがたくて、本当にありがたくて…、
 と同時に感謝した、って。」

「感謝? 誰に?」
「両親に。」
「親に…?」
「自分が親になってはじめて、両親がどんな思いで私たちのことを育ててきてくれたか、
 感謝しきれない思いがあふれて、あふれて、仕方なかったそうよ。」
「…。」
「私を産んでくれて、ありがとう。。。って、親にも、ご先祖さまにも感謝した、って。」
「親にも、ご先祖さまにも…。」
「そう、子供を一生懸命育てることと、両家の親たちにできるかぎりのことを
 していきたいと、夫婦2人で心から思ったそうよ。」
「へぇ、なんか、すごいですね…。」
「ね…。すばらしいわね。」

なんというか、両親の顔がチラっと浮かび、今回、旅に出るのを認めてくれたことも
重なり、ちょっと胸が熱くなった。
いつも、応援して、見守ってきてくれた父と母…。
私が生まれたとき、母たちもこんな風に思ったのだろうか?

「愛って、目に見えないけど、でも、確かに感じるのよね。」
「そーかもしれません…。」

2杯目のお茶を手には持ったけど、飲めなかった…。
私も、今まで、いろんな人たちの愛をたくさん受けて、生きてきたんだ。
急に、そんな思いがこみあげてきた。

「だからね、私たちに愛情つくして、大切に育ててくれた両親が喜ぶような
 ことを、していきたいわよね。」
「そーですね…。」
「女性にも、夫婦にも、みんないろんな役目があるからね、人それぞれだけど。
 私は女性として生まれてきて、子育てをしたいと思ったわ。」
「子育てを?」
「そう。私を育ててくれた母たちの気持ちが、本当の意味でわかるのは、
 子供を産んで育てて真に理解できるのかなぁ、と思ってね。」
「…。」
「命が伝わっていく、一こまになりたいなぁ、と思った。
 自分の女性としての役割について、あの時、考えさせられたわ…。
 不思議よね、昔は、そんなことこれっぽっちも思わなかったのにね。」
「人の心って、変化していくんですね。」

私の心も、すでに数日前とは、まるっきり変化している。
女性としての役割か…。
そんな風に考えたこともなかったなぁ。

流れゆく、やわらかな水音と風が、ここちよかった…。

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〜第5章へつづく〜

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