SPIRITUAL Voyage 02 of 幸せことば

結 婚 / 第2章 Café ふるむーん

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ヨガ教室の帰りにお茶に誘われた七夜は、弓月に聞いてみたいことだらけ。
彼女の遠まわしな物言いに、すぐには理解できなくとも、なにか光るものを感じます。

あの言葉

ここ、本当にステキなお店だなぁ。 
市民の森の北側の、小さなゲートの小道のさらに奥まったところに静かに佇んでいる。
小さな木の看板は、見落とす人も多いだろうな。
気付いた人だけ足をはこんでくださいね、店主に代わってそう言っているみたいな感じ。
それでも何組かお客さんがいて、みんないい雰囲気でくつろいでいる。
今日はお天気いいから、私たちは庭の木陰のイス席に座った。
いつもおだやかに微笑んでいて、そんな弓月さんを目の前に、
私はなんだかウキウキしている。
木のむこうには小川が流れていて、鳥の声とともに気持ちいい風をはこんできてくれる。
はぁ~、空気がおいしいって、こういうこと?♪☆♪☆

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「地元に、こんないいCafeあったんですね! あぁ~、癒されるゥ~♪」
「七夜ちゃん、疲れ気味? バイト忙しいの?」
「はい、夏休み前までは、掛け持ちでやろうと思ってて。」 
「旅に出たいから、って、この前チラっと言ってたよね。」
「そーなんですよ。お金貯めないと!」
「旅か。。。 いいわね。」
「まだな~んにも決めてないんですけどね。 北でも南でも、どこでもいいんです。」
「旅に、出たい気分なんだ?」

弓月さんの目が笑っている。
旅に出たい気分? いや…、正確には

「今の環境脱出したい!っていうか…。
 井の中の蛙、大海を知りに、旅にでろ~! みたいな?」
「七夜ちゃん、おもしろいねぇ。」

弓月さんの目がさらに細くなって、本当におかしそうに笑っている。
私もつられて笑顔になり、調子付く。

「ぜーんぜん、おもしろくないんですよぉ~!
 大学の勉強が、果たして今後の人生に役立つんだかちっともわかんないし、 
 うち女子大だから、友達に絶対他大学のサークル入った方がいいよ、って誘われて。
 入ったダンスサークルは、肝心のダンスはそっちのけで、飲み会とか
 ドライブとかばっかりしてて。
 最初はまぁ、楽しかったんですけど…。
 ~~先輩と○○ちゃんが付き合ってるらしい!とか、○子は~~君が好きなんだって!
 とか、結局、彼氏彼女の話ばっかりで、最近ちょっとウンザリしてます。」

わたしは一気に話して、ひとくちアイスティーを飲んだ。

「ふ~ん。 七夜ちゃんは付き合ってる人いないの?」
「2ヶ月前別れました。」
「へ~。 笑 」
「っていうか、周りがそんな話しばっかりで、学生の間に他にもっと熱中すること
 ないのかぁ~!? みたいな。 
 最近私、恋愛とか結婚とか、すっかりイメージダウンで、人間関係もウワベな感じ
 がしちゃって…。」
「そうなんだ。」
「だから、弓月さんがこの前聞かせてくれた言葉、新鮮でした!
 久々に胸の奥で鐘が鳴った感じ♪」
「そう、あの言葉が響いたんだ。」
「共感はしました。でも、感覚を超えた愛、ってよくわからないし…。」
「そっか…。それで、さがしものに行くんだ。」
「え?」
「いろいろ見つけに、旅に出るんじゃないの?」

さがしもの? 
見つけに…?

じーっと、やさしい表情で弓月さんがこっちを見ている。
小川の風にのって、どこからか甘い花の香りがする。

「そーかもしれません。」

弓月さんが、ゆっくりとティーカップを口元にはこんでいる。
私より、ひとまわりは年上だろうな。
手に、指輪とか何もしていない。

「あの、弓月さん。」
「なーに?」
「あのぉ、結婚とかは…」
「してないよ。」
「はぁ…。あの、それじゃあ、そのぉ…、付き合ってる人とか、好きな人とかは…?」

私って、ずうずうしいかな?年上の女性に…。
でも、聞いてみたかった。
すごく優しい目で、弓月さんがどこかちがうところを見ているような感じがした。

「ここの市民の森の奥にね、花の丘があるんだけど、夜になると、とっても星や月が
 きれいに見えるの。木立に囲まれて、ぱっと開けた丘があるのよ。」
「はぁ…。」
「あそこで、一緒に星を見たい人なら、いる…。 かな。」
「……。」

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星を見たい人…?

「あのぉ…、好きな人と一緒に見たいものって言ったら、映画とかじゃなくて、
 スター?」

わたし、指さして、思わず空を見上げる。

「七夜ちゃん、ほんとにおもしろいわねぇ。。。」
「いや、あの、わたし、真剣に聞きたいんですけど…。なんでお星さま?」
「毎日忙しくしてるとね、あんまり感じなくなっちゃうけど。。。 
 星や月や、悠久なるものを見てるとね、私たちが生まれるはるか昔から、
 そして死んだ後も、ずっと変わらずそこにあるでしょ。」
「…はい。」
「雄大な時の流れのなかで、刻刻と変化していくものすごい数の人や国があって、
 栄えては滅んで、滅んでは栄えて。 いのちがず~っと、続いてきて…。」
「はぃ。」
「よくぞ、めぐり会えたなぁ、って思わない?七夜ちゃんと今こうして話しているの
 だって、ものすごく奇跡的なことじゃない?」
「そう言われてみれば…、そうかも。」
「だからね、出逢えたことがありがたいよねぇ。。。
 星や月や、そういった悠久なるものの前で、“ありがとう” って、心から感謝したい
 人ならいる…。 そういう意味。」
「……。」

ちゅるちゅるちゅる~。 
わたし、アイスティのストローを勢いよく吸った。

寄り添う流木


「それって、好きな人、とはちょっと違う?感じ?ですか…?」
「心から尊敬する人、かな…。」
「あのぉ、それは、つまり…、その人は結婚したい相手ってことですか?」

弓月さんが、わたしから視線をはずして、ふと木立の方を見た。

「ん???」

わたしもつられて、その視線を追う → → →
と、あの気持ちいい小川にたどりつく。


「ねえ、七夜ちゃん。 あの小川にね、ときおり葉っぱが落ちて流れてくるのよ。」
「え? 葉っぱ?」

わたし、おもわず立ち上がり、小川まで駆けよってのぞいてみる。
あっ、ほんと、葉っぱがときどき流れていく。

「??? …、それが、なにか?」
「大きな川だと流木とかも流れてくるでしょ。 そうすると、その流木と流木が、
 ときに寄り添って一緒に流れていくんだって。」
「はい…。」
「でも、さっきまで一緒だったのが、流れによっては離れたりもするんですって。
 そうやって、川はいつしか支流から本流に合流して、大きな海に注ぐ。
 流木も、寄り添ったり、離れたりしながら、いつか海にたどり着くんですって。」
「……。」

え~~~っと。
わたしの質問、なんだったっけかな???

「夫婦も、その流木のようなものだって。」
「あっ! そうそう、結婚したい相手か?ってことだ!」

弓月さんが、優しく笑って誰かをみたような気がした。

「縁があれば、流木みたいに、寄り添えるのかな。。。」

みどりいろの風が、優しく吹いていった。
なにか、とても大切にしている存在が、あることを…、 感じた。
ハッキリ言わないけれど、なんでだろう、何か伝わってくるものがある。
何か…。

双子の魂のように


「結婚ってね、喜びに満ち溢れたものであるべきだ!って言った人がいたわ。
 それは、すべてをありのままに見ることができる機会でもあるんですって。」
「ありのままに見る…?」
「完璧に調和のとれた双子の魂のように、何をするにしても、愛に促されながら、
 新しい旅路を歩みはじめる時なんですって。」
「愛に促されながら…。」
「七夜ちゃん、天皇皇后両陛下の、結婚50周年のお祝いのインタビュー記事、
 新聞に出てたけど、読んだ?」
「いえ。」
「すばらしいことが書いてあったわ。機会があったら、読んでみて。」
「はい。」
「お2人が心から信頼して、尊敬しあっているのが本当によく伝わってくるの。
 長い年月の間にはね、私たちにはわからない苦労もそれはそれはあったでしょうし、
 それは、どんなご夫婦でも同じでしょうけど…。
 でもね、それを超えた、互いにいたわり合う優しさや穏やかさにあふれているの。」
「…。」
「人と人って、あんなふうに理解しあい、寄り添って生きていけるのね…。
 お2人を深く結びつけているのは、愛のみだ、って、思ったわ。」
「愛のみ…。」
「そう。愛に促されながら生きる、って、感覚を超えた愛を育む、って、
 あのような感じかな…、と思ったの。 確かな信頼が、そこにはあった…。」

だとしたら、結婚は私にはほど遠いや…。
だって、その愛が、よくわからないんだもん。

鳥たちが、森の奥でさえずっていた。

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〜第3章へつづく〜

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